コラム
【2024年】住宅ローン金利の今後はどうなる?固定・変動金利の動向を解説
2024年3月19日、日銀はマイナス金利政策を解除し金利の引き上げを決めました。
およそ17年ぶりの利上げであり、日本の金融政策は大きく転換することになります。それに伴い、マイナス金利政策解除で懸念されているのが住宅ローン金利の上昇です。
この記事では、住宅ローン金利の今後はどうなるのか、固定・変動金利の動向を紹介します。
【この記事でわかること】
・住宅ローンにおける指標の違い
・【2024年最新】住宅ローン金利の今後に関するアップデート情報
・2024年以降の住宅ローン金利は今後どうなるのか
・住宅ローン金利が上がる場合の対策
そもそも住宅ローンにおける指標の違いとは?
ここでは、住宅ローンの指標について固定金利・変動金利に分けて解説します。
住宅ローンの指標とは、具体的には「住宅ローンの金利は何を基準にして決められているか」です。
以下の2つの金利について住宅ローンの指標を解説していきます。
・固定金利
・変動金利
それぞれ見ていきましょう。
固定金利
住宅ローンの固定金利は、10年物国債などに代表される長期金利を指標として決定されます。
長期金利を指標として各金融機関の基準金利(店頭金利)が決められたあと、各金融機関の金利引き下げ幅が適用されて貸出金利が決まります。
最終的な貸出金利の違いは、各金融機関の金利引き下げ競争の結果によって生じるものと理解しておきましょう。
変動金利
住宅ローンの変動金利は、日銀が決定する政策金利の影響を強く受ける短期金利を指標として決定されます。そのため、政策金利の影響を強く受けるといえます。
短期金利を指標として各金融機関が基準金利(店頭金利)を決めて、最終的に貸出金利を決定する流れは固定金利と同様です。
変動金利の動向については、政策金利の動向を左右する消費者物価指数や日銀の金融政策などを日々チェックしましょう。
なお、日銀は2024年3月18、19日に開催された金融政策決定会合で、「マイナス金利政策」を解除し、金利の引き上げを決定しました。これにより懸念されるのが、住宅ローン金利の上昇です。
今後、金融機関は、変動型の住宅ローン金利を引き上げる可能性があります。
※参考:【詳しく】日銀 マイナス金利政策を解除 異例の金融政策を転換|NHK
【2024年最新】住宅ローン金利の今後に関するアップデート情報
金利の動向に大きな影響を及ぼすのが、米国の景気状況と日銀の金融緩和政策です。
ここでは、住宅ローン金利の今後に関する最新情報を紹介します。
米国の景気状況
日本貿易振興機構の見解によれば、2023年における米国経済の動向は、前半は消費および設備投資が好調なため、前期比年率2%を超えて上向きとなりました。
後半も消費が活発化したこともあり、第3四半期は4.9%、第4四半期も3.2%(改定値)と成長しています。2023年全体では前年比2.5%となり、潜在成長率である1.8%を大きく上回る結果となりました。
ただし、金利上昇については、2024年にかけて徐々に顕在化すると考えられています。企業部門では、2024年前半からコロナ禍で調達した資金の借り換え時期を迎えていきます。
2024年には金利上昇が本格的に影響し始めると予想されるため、経済の動向をチェックするのが重要です。
日銀の金融緩和政策
金融緩和とは、経済や物価の安定を目指すために行われる金融政策です。日本では日本銀行が政策を決めており、景気の回復や経済成長を促します。
日銀は2024年3月19日にマイナス金利政策の解除を発表し、植田総裁は記者会見で、「マイナス金利政策などの大規模な金融緩和策は、その役割を果たしたと考えている」と述べました。
日銀による利上げはおよそ17年ぶりで、日本の金融政策は大きな転換期を迎えています。
ただし、そこで懸念されているのが住宅ローン金利の上昇です。金融機関によっては、固定金利を引き上げる動きも見られます。
一方、「短期プライムレート」を参考に決められている変動金利は、2009年1月13日以降、上昇していません。今後、日銀の判断を受けて金融機関は、変動金利の引き上げを実行するかどうかを判断することになります。
これから住宅ローンを利用する予定がある人は、金利の動向をこまめにチェックしてから金利のタイプを選びましょう。
※参考1:【詳しく】日銀 植田総裁「大規模金融緩和策は役割果たした」|NHK
※参考2:【詳しく】日銀 マイナス金利政策を解除 異例の金融政策を転換|NHK
2024年以降の住宅ローン金利は今後どうなる?
2024年3月19日に、日銀がマイナス金利政策解除を発表したことから、住宅ローン金利が上昇するのではないかという懸念の声が聞こえてきます。
・固定金利の今後はどうなる?
・変動金利の今後はどうなる?
ここでは、2024年以降の住宅ローン金利は今後どうなるのかについて解説します。
固定金利の今後はどうなる?
日銀がマイナス金利政策を解除したことにより、固定金利に関してはすでに引き上げる動きが出ています。
固定金利は長期金利の影響を受けやすいため、日銀が短期・長期の両方で金利の調整を行った場合、長期金利が上昇する可能性が考えられます。
ここ5年間の国債金利・長期プライムレートの推移を見ておきましょう。
10年物国債金利 | 2019.1月 | 2020.1月 | 2021.1月 | 2022.1月 | 2023.1月 | 2023.10月 |
▲0.023% | ▲0.025% | 0.033% | 0.104% | 0.491% | 0.811% | |
長期プライムレート | 2019.7月 | 2020.4月 | 2022.2月 | 2022.9月 | 2023.1月 | 2023.10月 |
0.95% | 1.10% | 1.10% | 1.25% | 1.50% | 1.50% |
※出典:日本銀行長期プライレート|日本銀行
2022年12月に長期金利の変動許容幅が0.5%に拡大されて以降、2023年1月に国債金利が一気に上昇しています。それに伴って長期プライムレートも上昇していることが分かるでしょう。
また、7月の政策決定後は0.8%まで上昇しており、長期金利に連動している固定金利については、多くの金融機関で金利の引き上げが実行されました。
固定金利は長期間金利が固定されるため金利上昇時のリスクヘッジができますが、変動金利より金利が高いため、借り入れる際は金利の動向をチェックするのがおすすめです。
※参考:日銀 長期金利の変動幅の運用を柔軟化 0.5%の上限超え容認|NHK|日本銀行(日銀)
変動金利の今後はどうなる?
変動金利は、住宅ローンの利用者の多くが選んでいる金利のタイプであり、固定金利より金利が低いのがメリットです。
日銀のマイナス金利政策解除を受けて、変動金利が上昇するのではないかと懸念されています。そして、政策金利を「マイナス0.1%」から「0〜0.1%」に引き上げました。
ただし、変動金利の基準は短期プライムレート(短プラ)で、現在1.475%です。(2024年4月時点)変動金利の基準金利を「短期プライムレート+1%」とする金融機関が多いことから、変動金利の基準金利は2.475%です。
マイナス金利解除後も、大手銀行は短プラを据え置く方針を示しているため、変動金利が大幅に上昇する可能性は低いでしょう。
※参考:やっぱり当面は変動金利? 専門家に聞く「利上げ時代」の住宅ローン|朝日新聞デジタル
住宅ローン金利が上がる場合の対策
変動金利や固定期間選択型の住宅ローンを利用している人にとっては、金利上昇リスクを避けられません。
ここでは、住宅ローン金利が上昇した場合の対策について解説します。
・借り換えを検討する
・繰り上げ返済を検討する
・金利が上がる前提でシミュレーションしておく
・キャッシュフロー表を作成する
順番に、見ていきましょう。
借り換えを検討する
借入している金融機関より低金利の住宅ローンを提供している金融機関に借り換えることで、毎月の返済額を下げられます。
ただし、借り換える場合には事務手数料や登記費用が必要となるため、諸経費も含めて得するかどうかを検討しましょう。
現在はネット銀行を中心に金利競争が激化し、かなり低い金利で借入できる場合もあります。金利上昇の気配が感じられたら、借り換えを検討してみるのも1つの方法です。
繰り上げ返済を検討する
繰り上げ返済も金利上昇リスクを軽減する効果的な方法の1つです。
残債を一度に残額返済できれば全く問題ありませんが、住宅ローンは借入規模も比較的大きいため、一括で返済することは困難です。
そのため、元金の一部を無理のない範囲内で返済する繰り上げ返済を検討する人が多くなっています。
繰り上げ返済には、返済期間短縮型と返済額軽減型の2種類があります。それぞれ説明していきます。
返済期間短縮型
返済期間短縮型は、毎月の返済額を変えずに、繰り上げ返済した分だけ返済期間(年数)を軽減する方法です。
返済年数が軽減することで支払う金利も軽減されるため、総支払金額が低く抑えられるメリットがあります。
しかし、金利上昇局面においては、毎月の返済額も上昇するため、短縮する返済年数と毎月の返済額のバランスを調整する必要があります。
返済額軽減型
返済額軽減型は、返済期間を変えずに、毎月の返済額を軽減する方法です。
返済年数が変わらないため返済期間短縮型に比べて総支払額は多くなりますが、毎月の返済額を軽減できるメリットがあります。
金利上昇局面では、毎月の返済額を軽減すると捉えるより、金利上昇分を抑えて現在と同額の返済額を維持する方法と捉えたほうがよいでしょう。
金利が上がる前提でシミュレーションしておく
金利が上昇することを前提に、各金融機関のウェブサイトを利用しながら住宅ローンのシミュレーションを実施しましょう。
返済を始めてから経過した年数や残債額を明確にして、金利が上昇する幅を設定してシミュレーションしましょう。
残債が多くい人ほど、金利が上昇した場合の月額負担額が大きくなることが実感できるでしょう。予測に基づいて事前に繰り上げ返済計画や貯蓄計画を立てておくことをおすすめします。
キャッシュフロー表を作成する
上記のシミュレーションと合わせて、金利が上がった場合のキャッシュフロー表を作成すると、金利上昇による家計への影響を把握できます。
キャッシュフロー表とは、毎年の収入と支出、貯蓄額を算出して収入状況をチェックし、悪化した場合は原因を究明できるツールです。
支出項目などを細かく規定するほど、支出が家計を圧迫しているのかを明確に把握できるでしょう。
住宅ローン返済に充てる支出額を、金利が上昇した場合の予測数値に変更してみて、どれだけ収支が悪化するかチェックしましょう。
その上で、どの支出を減らせるか、どの収入を増やすかなどを事前に検証しておきましょう。
住宅ローン金利の今後に関するよくある質問
ここでは、住宅ローン金利の今後に関するよくある質問に回答します。
・金利における10年後の予想は?
・住宅ローン金利が今後上がる可能性はある?
・変動金利は今後上がらないって本当?
順番に見ていきましょう。
住宅ローン金利における10年後の予想は?
日銀はマイナス金利政策解除を発表後、声明文で、「当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている」と記しています。
マイナス金利を終えた後も緩和的な環境が続くと強調していることから、「おそらく短期プライムレートの引き上げは広がらないのではないか」といわれています。
みずほ銀行頭取である、加藤勝彦全国銀行協会会長も14日の記者会見で、「マイナス金利が解除されても必ずしも短プラが上がるということではない」と語っていました。
ただ、日銀が今後も利上げを継続すれば金利が上昇する可能性があります。10年後には大幅な利上げではないにしても、緩やかに上昇していることは考えられます。
※参考:住宅ローンどうなる? 変動金利の急な引き上げに配慮|日本経済新聞
住宅ローン金利が今後上がる可能性はある?
マイナス金利政策解除が実行されても、変動金利は急激に上がることはないといわれています。今後も緩和的な動きが継続するという見方から、しばらくは低い金利が続くでしょう。
ただし、今後、日銀が利上げすれば、変動金利は緩やかに上昇していく可能性があります。
実際に、固定金利では長期金利の上昇傾向を受けて、すでに引き上げる動きがあります。そのため、新規に住宅ローンを組む際は、今後の金利の動きに注意しながら借入しましょう。
※参考:日銀マイナス金利政策解除 住宅ローン変動型や固定型どうなる 預金 企業の資金調達は |NHK
変動金利は今後上がらないって本当?
変動金利は当面大幅な上昇はないと見込まれていますが、市場の動向により上がる可能性もあります。
基準金利は、今後日銀が追加利上げをすれば上昇することが考えられるため、金利の動向をチェックすることが必要です。
住宅ローン金利は今後を考えながらシミュレーションしよう
現在は、金利を上げたくても上げられない状態にあるといえます。そのため、現時点で期間限定型の固定金利を選択することはあまりおすすめできません。
仮に10年間金利が固定されたとしても、10年経過したあとの金利下げ幅は今までの10年間に比べてかなり小さい商品が多いからです。
10年後に金利が上昇した場合、さらに毎月の負担が大きくなります。そのため、固定金利を選択したい場合は、全期間固定型も合わせて検討するようにしてください。
今後、堅実に住宅ローンを返済していくためには、国内・海外の情勢をチェックしながら金利上昇した場合に備えて自らシミュレーションしておくことが大切です。
仮に金利が上昇しても、シミュレーションに基づいた収入アップや貯蓄などで繰り上げ返済できるように準備しましょう。
四季工房では、住宅ローンの相談会も行っています。借り換えや繰り上げ返済を考えている人はお気軽にショールームへお越しください。